メニュー

お口の中をケガしてしまったときの対処

[2024.06.09]
歯科医師 亀澤亜季
 
お子さんが転んだりぶつかって、歯が欠けてしまったり抜けてしまったり、お口の中を切ってしまったりということは、親がどんなに注意していても起こりうることです。
我が家にも1歳と6歳の子供がいますが、特に歩き始めたばかりの1歳の子供は、本当によく転びます。先日は転んでお口の中からかなり出血したりということもありました。
先日オンライン・セミナーを受け、子供のお口の中に万が一のことがあった時のための対処方法を確認しました。もちろん成人の場合についても説明します。ぜひ最後までお読みください。

 

歯に怪我をしやすい年齢は?

    • 乳歯で1-3歳
    • 永久歯で7-9歳
乳歯の場合は特に立ち始めた1歳に多く、強くぶつけると後継永久歯の40%になんらかの問題(ホワイトスポットなど)が起こると言われています。
 
歯をぶつけた時、問題が起こるのは歯だけではない
歯の外傷による損傷は、多部位、同時損傷と言われます。
歯をぶつけただけだったとしても、歯がうわっている骨、歯と骨を繋ぐ靭帯(歯根膜)、歯茎や唇などの色々なところにダメージがいってしまう可能性があり、それら全てをチェックしていく必要があります。
 

お口の中を怪我した時、すべきこと

①まずは、全身状態のチェック
お口を怪我した時、まずは頭にダメージがないかを確かめる必要があります。特に、元気がない、ぼんやりしているような時は要注意、医療機関を受診しましょう。
特に、
    • パンダの目: 目の周りにあざ
    • パンダの耳: 耳の後ろのあざ
は、脳出血の兆しかもしれません。1時間以内に脳外科へ!

 
②他に怪我がなかったら、まずは安静と清潔!
他の部分を汚した時と同様に、お口の中を怪我した時も、安静と清潔が重要です。
歯にとっての安静とは、歯が折れてしまったところを刺激がいかないようにおおう、ずれてしまった歯の位置を元に戻す、揺れている歯を固定するということになります。
そして特に子供の歯はやわらかく、亀裂からばい菌が感染してしまう可能性があるため、よく消毒をする必要があります。
お口の中の虫歯菌を増やさないためにも、お家では甘いものを控え優しくお掃除することが必要です。

歯医者では、怪我をした時どんな治療をするか

①歯がかけてしまった時
かけてしまったかけらを持って歯医者さんへかかるようにしましょう。
小さく欠けてしまった場合は、子供の場合は表面を接着性レジンでカバーします。大人の場合は、欠けたところが非常に小さければ磨くだけで済ますこともあります
大きくかけてしまい、歯の神経が露出してしまった時は、神経を温存できるように治療をしていく必要があります。
神経が露出しているところをよく洗ってから水酸化カルシウムなどのお薬で詰め、合成樹脂材料で、形を直します。
この治療をすることで80%ほどの確率で神経を温存できると言われています。
さらに成功率を上げるためには、露出した神経を2ミリほど切断する、断髄という処置を行うこともあります。これを怪我をしてから一週間以内に行うことで、歯髄を温存できる可能性は95%まで上がります。
 
②歯の根が折れた時の対処方法
まずはあまりいじったりせず、安静にしておいてください。
歯医者では一旦固定し、2ヶ月経過を見て行きます。
大人であれば根っこが割れてしまえば抜歯になるのですが、子供だとくっつくことがあると言われています。
 
③歯がグラグラする、ぶつけて曲がってしまった
こちらもあまり触ったりせず、ご来院ください。
曲がった歯を元の位置に直し、固定します。
この処置ができるのは、大体三日間。それをすぎるとそこで固定されてしまうので、早めにご来院ください。
また、ぶつけて起こる歯のぐらつきは受傷当日よりも半日から1日後にひどくなります。大丈夫かなと思っても、念のための受診をお勧めします。
 
④歯が抜けてしまった
できる限り早く元の位置に戻すことが非常に大切です。乾燥状態なら30分以内、それ以外でも3時間以内に元に戻すことで、歯が元通りくっつく可能性があります。
抜けてしまった歯をお持ちになる際は、ラップで包む、牛乳に入れる、歯の保存液(HBSS)に入れた状態でお持ちいただくと、より長く保存がききます。
(ラップで包むと1時間、牛乳に入れると一晩、HBSSで2日保存可能)
生えたばかりの大人の歯の場合は、歯の神経も温存できる可能性があり、このことは今後の生活にとても大事なことです。
子供の歯は以前は戻すことができないと言われていましたが、今はこの処置を行うことがあるようです。
 
⑤歯茎や唇などの怪我
まずはぶつけたらよく冷やすこと。
そしてよく洗って、傷口に異物が入ったままにしないことが重要です。
上唇小帯の裂傷、唇が切れたなどですが、いずれも消毒のみで済むケースが多いです。
よっぽど大きく唇などが切れた場合は縫うケースもありますが、当院ではほぼレーザー(炭酸ガスレーザー)を当てるだけできちんと止血することが多いです。
 

ぶつけたあとの経過

  • 受傷後1日
揺れがひどくなったり、歯や歯茎の色が変わってくることもありますが、数日で元に戻ることもあるため、しばらく様子をみます。
 
  • 受傷後1週間
傷や歯の神経に感染が起こっているかがわかるため、それに応じた処置を検討していきます。
 
  • 受傷後2週間
感染していれば膿んで腫れてきます。
ここまでで膿んだり腫れたりしなければ、歯茎の周りなどの感染の心配はかなり少なくなります。
 
  • 受傷後1ヶ月
場合によっては強い力がかかった影響で歯が吸収されてきます。
 
  • 受傷後1.5ヶ月
骨折した部分があれば治癒します。
 
  • 受傷後3ヶ月
歯の神経の生死が明瞭化するので、レントゲンなどをとり診断します。
歯の神経が死んでしまった場合は、歯の根の治療が必要になります。
 
  • 1年後
ぶつけたことによって起こった全ての問題点が観察できます。
 
 
このように、ぶつけたところは長い時間をかけて変化が起こっていきます。
お口に中を怪我した時は、1、2回だけ通院するのではなく歯医者さんに定期的にかかるようにしましょう。
 
歯科医師 亀澤亜季

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME