むし歯じゃないのに、歯がしみる?!NCCLについて
歯が凍みる・すり減る原因「NCCL」とは?歯のすり減りとその対策を解説
*この記事は、インプラント治療のご案内や当院の特徴とあわせて読むと、より理解が深まります。
歯科医師 亀澤亜季
凍みる症状の原因になることが多い、歯のすり減り。
特に歯の根元のところがむし歯でないのに欠けてきてしまう楔上欠損(NCCL)には多くの方が悩まれています。
歯磨き粉のメーカーや、インターネット上でも偏向性のある記事が多く、実際のところどうなのかを知るため、西村 耕三先生 の『「NCCLは咬合が原因」は本当か?』のセミナーを受講し、まとめてみました。
Tooth Wear は、むし歯やケガが原因ではなく、加齢以上に歯の表面がすり減ってしまうことを指します。これが進行すると、知覚過敏や見た目の変化、歯の強度の低下につながることもあります。
Tooth Wearの種類
1. 摩耗(アブレージョン)
歯ブラシやフロスなど、器具の使い方によって歯がすり減ること。
2. 咬耗(アトリション)
歯ぎしりや強い噛みしめによって歯がすり減ること。咬み合わせの面がツルツルと光沢を帯びるのが特徴です。
3. 酸蝕(エロージョン)
酸性の飲食物(柑橘類、炭酸飲料、黒酢など)や胃酸の影響で歯が溶ける現象です。歯の先端や噛む面が凹んだり、全体的に小さくなったりします。進行が早く、重症化しやすいので要注意。
4. NCCL(Non-Carious Cervical Lesion / 非う蝕性歯頸部歯質欠損)
いわゆる「くさび状欠損」と呼ばれるもので、歯と歯ぐきの境目あたりが削れてしまう現象です。欠け方は、くさび型のほかに、皿のような形やU字型になることもあります。
5. 混合型
上記のいくつかのタイプが同時に起こるケースも多く、特に酸蝕+歯ブラシ摩耗+歯ぎしりが組み合わさると、進行が一気に加速しやすくなります。
NCCL(非う蝕性歯頸部歯質欠損)について
NCCLの特徴
- 40歳以上の約半数に見られる
- ほとんどが頬側・唇側(舌側は少ない)
- 小臼歯・犬歯・大臼歯・前歯の順で発生しやすい
- 男性にやや多い(ただし、性別差がないという説もあり)
- 上の歯のほうが下の歯よりやや多い(こちらも差がないという説あり)
- 知覚過敏の原因になりやすい(特に若い人は象牙細管が太いため、より敏感になりやすい)
NCCLがある人の約40%が知覚過敏を訴えると言われています。
NCCLの原因は?
完全には解明されていませんが、いくつかの説があります。
① 歯ブラシによる摩耗説
「強く横に磨きすぎると、くさび状欠損ができる」という考え方。研究では、抜去歯を使った実験で2時間ほどで明らかな欠損ができたという報告もあります。
② 歯ブラシだけが原因ではない説
- 動物の歯にもNCCLができる
- 歯ブラシがなかった時代(古代)にもNCCLが見られる
- 歯ブラシが当たりにくい場所にも発生する
このことから、歯ブラシだけでは説明できないのでは?という意見もあります。
③ アブフラクション説(咬み合わせの力が原因)
噛む力によって歯の根元にストレスがかかり、引っ張られるようにして歯質が欠けるという説です。
④ 複合説(いろいろな原因が組み合わさる)
- 酸蝕(食べ物・飲み物・胃酸)
- 歯ブラシによる摩耗
- 咬み合わせの問題(ブラキシズムなど)
- 唾液の影響(pH値や緩衝能)
これらが複雑に絡み合ってNCCLを引き起こすと考えられています。
NCCLを予防するには?
① 酸蝕対策
- 夜遅くに食べない
- 柑橘類や黒酢などの頻繁な摂取を控える
- 胃酸の逆流がある人は、医師に相談(PPIなどの薬で改善することも)
- アルコールは寝る前に飲まない
② 正しい歯の磨き方
- ゴシゴシ横磨きをしない(小さく細かく動かす)
- 硬すぎる歯ブラシを使わない
- 酸性の飲食物を摂取した直後の歯磨きは避ける(1時間ほど間を空ける)
- 知覚過敏用歯磨剤を活用する
③ 咬み合わせや歯ぎしりの対策
- 夜間のマウスガード装着(特にブラキシズムのある人)
- 昼間のTCH(無意識の噛みしめ)に気をつける
- 就寝前4時間は食事を控える(胃酸逆流対策)
④ 唾液の分泌を促す
- 水をしっかり飲む
- キシリトールガムを噛む(NCCLの発生を減らす効果があるとの報告も)
NCCLの治療
1. 知覚過敏がある場合
- 原因歯が特定できればレジン修復
- 特定できない場合は、まず生活習慣の改善や歯磨剤の見直しをする
- それでも改善しない場合はマウスガードの検討
2. 知覚過敏がない場合
- 欠損が大きい場合 → 修復処置を検討
- 欠損が小さい場合 → 予防と指導を重視
CR修復(コンポジットレジン充填)
NCCLの修復には柔軟性のあるレジン(フロアブルタイプなど)を選ぶのがポイント。接着を強くするために、
- 表面処理をしっかり行う
- プライマーを念入りに塗る
- エナメル質部分はエッチング処理といった工夫が必要です。