マグネット付き入れ歯について
[2025.01.20]
歯科医師 亀澤亜季
当院でも作成することの多いマグネットつきの入れ歯。
1991年に発売が開始し、2021年に保険適応されるようになったことでますます需要が伸びてきているのを受け、今回大山哲生先生の『今更聞けない磁性アタッチメント』の講習会を受講しましましたので、まとめてみました。
磁性アタッチメント(マグネット付き入れ歯)とは
入れ歯をより安定して使うために、小型の磁石を使用しているマグネットつき入れ歯、その入れ歯に取り付けられた磁石部分(磁石構造体)と、歯根に付いている金属部分(キーパー)を合わせて『磁性アタッチメント』と呼んでいます。
磁性アタッチメントに使われている金属
①磁石
永久磁石とも呼ばれる、一般的な磁石です。
以前はサマリウムコバルト磁石・ネオジウム鉄磁石の二つが使用されていましたが、今ではネオジウム鉄磁石という合金が使用されています。
錆びやすい、傷がつきやすいという欠点があります。
②磁性ステンレス合金
磁石とくっつく金属です。
鉄、ニッケル、コバルトが該当します。
磁性アタッチメントの中では、磁石が錆びたりしないように、また、正しい磁力を発揮する磁気回路を設定するため、磁石を包んでおくためのカップヨーク、ディスクヨークや、歯根に取り付けるキーパーに使用されています。
ステンレス鋼が使用されています。
③非磁性ステンレス合金
磁力を全く帯びない合金です。シールドリングに使用されています。
マグネット義歯の特徴
①半永久的に変わらない吸引力
他からの強い磁力の介在がなければ、半永久的に磁力を発揮できます。
これは入れ歯を維持するための他の装置にはない特徴です。
②垂直方向に強い吸引力を持つ
物によっても違いますが、垂直的な力(上に引っ張るような力)には、600gfぐらい耐えることが可能と言われています。
ただし横からかかる力には弱く、僅か1/10ほどの力で取れてしまうと言われています。
この、横からの力で取れてしまうという特徴によって、歯が揺さぶられるのを防ぎ、歯を長持ちさせることが可能です。
③吸引力による復元
外れそうになった時に、自ら正しい位置に吸い付いて外れるのを防いでくれます。
ただし、磁石構造体とキーパーが離れすぎると、吸引力が弱くなり、戻らなくなります。
0.05ミリ(髪の毛一本程度)距離があると、吸引力は半分以下になってしまいます。
磁性アタッチメントの種類
磁性アタッチメントには根面板型、テレスコープ型、歯冠外型、インプラント型の四つがあり、このうち保険で作製できるのは根面板型と呼ばれるものです。
①根面板型
歯根につけた金銀パラジウム合金や銀合金で作製したカバー(根面板)にステンレス鋼製のキーパーをつけたキーパー付き根面板と、義歯に取り付けた磁性構造体によって義歯が動くのを防止する方法です。
このキーパーつき根面板は入れ歯の下に隠れて、普段は見えない状態です。
②テレスコープ型
歯冠部分キーパーを、入れ歯に被せ物付きの磁石構造体を取り付けたものです。
入れ歯付きの被せ物が、歯に磁石でくっついているような状態なので、とても見た目がよく安定性もいいのですが、歯にとってはとても強い力がかかるので負担が大きく、適用条件が厳しくできない方も多いと言う欠点もあります。
③歯冠外磁性アタッチメント
被せ物の外側に金属の突起が出ており、そこに入れ歯をくっつけて使うようなタイプの入れ歯です。
歯に対してはかなり大きな力がかかるため、ご自身の歯を何本か削る必要があり、歯にとってはかなり負担が大きい方法です。
④インプラント型磁性アタッチメント
インプラントを入れてそこにキーパーをつけて、入れ歯に入れた磁石構造体によって入れ歯を安定させる方法です。
特に下の総入れ歯は安定しにくいことが多く、インプラントを2本入れ、この上に入れ歯を入れる、インプラントオーバーデンチャーと言う方法が、すでに海外では、下顎を総入れ歯にする時の第一選択となっています。
根面板つき磁性アタッチメントの特徴
一般的なマグネット義歯の特徴です。
①見た目がいい!
好きなように歯の位置を変えられ、歯根は入れ歯のしたに隠れ見えないので、見た目がご自身の歯が残っていた時よりも綺麗になることもあります。
②普通の入れ歯に比べて口元が綺麗
一般的な入れ歯よりも、条件次第では口元の入れ歯のプラスチック部分を短くすることができ、総入れ歯などで気になりがちな口元のボコっという膨らんだ感じがなくなります。
③自分の歯を長持ちできる
歯周病などで骨や歯茎が下がってしまった歯を短くすることで、横揺れの力がかかりにくくなり、歯を長持ちさせることができます。
④痛くなりにくい
残った歯根が支えとなり入れ歯が歯茎に食い込みにくいので痛くなりにくく、噛んでいる感覚があります。
⑤入れ歯が壊れやすい
よく噛めることと、根面板部分の入れ歯が薄くなるので、入れ歯がやや壊れやすいという欠点もあります。
MRI検査とマグネット義歯
①マグネット義歯は、MRI検査室に絶対持ち込まないようにしてください。
非常に危険なうえ、入れ歯の磁石がだめになってしまい、使用できなくなります。
②お口の中に入っている金属(キーパー)は取れてしまったり、体に害を与えることはありませんので、ご安心ください。
(9グラムほどの力で引っ張られ、0.8度ほど発熱しますが、セメントでしっかりくっついているので、問題ありません)
③キーパーにより、MRI画像に乱れを生じます。
スピンエコー法という方法の方が影響が小さいといわれています。
しかし、どうしてもキーパーを中心に4-8センチ程度の画像の乱れが生じるため、もしもお口の中、ベロ、のどなどのMRIを取る際は、ご報告ください。
マグネット義歯の作り方
一般的な入れ歯よりは、工程が多くなります。
①歯の形を整える
歯の頭部分をカットし、根だけの状態にする
②型取りをして、キーパー付き根面板を作る
簡単な形の被せものを作成します。
③根面板を歯に取り付ける
セメントで歯に取り付けを行います。
④入れ歯を作るために型取りを行う
⑤出来上がった入れ歯に磁石を取り付ける。
お手入れの仕方
基本的には一般的な入れ歯と変わりありません。
お口の中の根面板はワンタフトブラシなどの小さなブラシでよく磨くようにしましょう。
歯周病や虫歯のリスクがあります。
日本磁気歯科学会ホームページ
マグフィット
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