歯周病と全身疾患の関係性
歯周病は全身疾患とかかわりがあります。
口の問題だけではない全身疾患のリスクを解説!
歯周病はお口の中の問題のみならず、体の健康にも大きな関連性があることをご存じでしょうか?
今回、日本歯周病学会監修の『ペリオブック』から、歯周病と全身疾患の関係についてをまとめてみました。
1.歯周病と糖尿病
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歯周病は糖尿病の第6の合併症とされ、糖尿病患者は歯周病が進行しやすい。
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糖尿病により免疫力が低下 → 歯周病が悪化。
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歯周病しよる炎症性物質によりインスリンの作用が阻害→糖尿病が悪化。
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歯周病治療によりHbA1c(血糖コントロール指標)が改善することが報告されている。
- 糖尿病の進行と歯周病の進行は関連あり!医科と歯科の連携が非常に重要(糖尿病連携手帳の活用など)。
2. 歯周病と動脈硬化
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歯周病により高感度CRP(炎症マーカー)上昇 → 動脈硬化のリスク増大。
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HDLコレステロールの減少・LDLの増加も歯周病との関連が報告されている。
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歯周病による直接的な動脈硬化改善効果のエビデンスは限定的だが、炎症管理が重要。
3.歯周病と虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
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歯周病患者は虚血性心疾患の発症率が高いとする報告も。
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メカニズム仮説:
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歯周病菌やその毒素の血管直接作用
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炎症性サイトカインの波及
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腸内細菌叢の変化
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ただし、米国心臓協会(AHA)は因果関係を否定的に評価しており、今後の研究が必要。
- 歯周病の人は感染性心内膜炎になるリスクあり!外科処置だけではなく、歯周病の治療が、感染性心内膜炎の予防に!
4.歯周病と慢性腎臓病(CKD)
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歯周病がCKDの進行を促進し、CKDは歯周病を悪化させる双方向性の関係。
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炎症性物質や歯周病菌の毒素(LPS)が腎線維化を促進。
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CKDでは免疫機能や骨代謝が低下し、歯周病が重症化しやすい。
5.歯周病と誤嚥性肺炎
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高齢者に多い肺炎の70-90%が誤嚥性で、**不顕性誤嚥(せきなどが出ない、知らぬ間の誤嚥)**がリスク。
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歯周病菌などを含む口腔内の細菌が気管へ侵入し肺炎に。
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口腔ケア(ブラッシング・清掃)による予防が不可欠。
6.歯周病と骨粗鬆症
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骨粗鬆症で歯槽骨(歯を支える骨)が脆弱になり、歯周病による骨破壊が進みやすい。
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特に閉経後の女性では、ホルモン低下により骨吸収が進行。
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骨粗鬆症薬を服用中の方は、歯科治療(抜歯などの外科処置)や、重症の歯周病に注意!
7. 歯周病と妊娠
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妊娠中のホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)変化により歯肉炎が悪化。
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細菌が原因であり、妊娠そのものが歯周病の原因ではない。
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出産後はホルモンの正常化で症状が軽快する場合が多い。
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妊娠中も適切な口腔ケアと定期歯科受診が推奨される。