白い金属?!ジルコニアについて
インプラント材料「ジルコニア」とは?歯科治療での特徴・性質・作り方をやさしく解説
*この記事は、インプラント治療や当院の特徴とあわせて読むと、より理解が深まります。
この頃の材料の進歩は目覚ましいものがあります。
特にジルコニアは、以前のものから比べて見た目やフィット感が格段に進歩しており、今後は被せものの処置の主流になっていくのではないかと思い、廣田正嗣先生の『GPの教養としての歯科材料学』より、ジルコニアの部分を抜粋してまとめてみました。
ジルコニアとは?
ジルコニアは、金属「ジルコニウム」と酸素がくっついてできた物質で、「ZrO₂」と書きます。
これは「金属のように見えるけど金属じゃない」セラミック(焼き物のような材料)の一種です。
他にも「アルミナ」や「チタニア」という似たような材料があります。
ジルコニアのすごいところは、体の中でも安定していて反応しにくいこと,そして硬さ1200Hv、曲げ強さ1200MPaという、通常のセラミックスより圧倒的に高い強度を持つことです。
アレルギーになりにくく、硬く、安全な素材として近年歯のかぶせ物などに使われるようになりました。
ジルコニアの性質と変化
ジルコニアの中の原子の並び方(結晶構造)は、温度によって変わる、水などのような性質があります。
例えば、常温では「単斜晶(たんしゃしょう)」、1170度~2360度では「正方晶(せいほうしょう)」、さらに高い温度では「立方晶(りっぽうしょう)」になります。
正方晶のときが一番強くて、立方晶になると透明になり、ダイヤモンドのような見た目にもなります。
この正方晶の状態を常温で安定させるために、「イットリウム」という物質を少しだけ混ぜます。
こうして作られたものを「部分安定化ジルコニア」と呼び、特に「Y-TZP」という種類が歯科治療などでよく使われます。
どうやって作るの?
ジルコニアはとても硬いため、最初から完成品を削るのではなく、少し柔らかい「仮の状態」で削ってから高温で焼き固めます。作る流れは次の通りです:
- 粉を固めて仮の形にする(加熱するHip処理や冷却するCIP処理など)
- 約1000度で軽く焼いて半焼結体の「グリーンボディ」にする
- コンピューターで形を20%大きく設計(CAD)し、機械で削る(CAM)
- 最後に高温(1350〜1600度)で焼いて完成!約20%収縮します。
- 必要に応じて色をつけたり、表面をピカピカに磨いたりする
焼く前のジルコニアは少し白っぽくてザラザラしていますが、焼いたあとはつるつるで光沢が出てきます。
ジルコニアの強さのひみつ
ジルコニアはセラミックなのに、とても強くて割れにくいです。
その理由は「自己修復機能」があるからです。どういうことかというと、ジルコニアにヒビが入りそうになると、正方晶から単斜晶に変わり、ちょっとだけ膨らんでヒビをふさごうとします。これによって割れにくくなっているのです。
ジルコニアの欠点は?
ジルコニアにも弱点はあります。
たとえば、「見た目」が自然の歯と少し違って見えることがあります。ただ、最近は強度が少し落ちる代わりに光を通しやすい新しいタイプのジルコニアも開発され、かなり自然に見えるようになっています。
もう一つの問題は、「削ったり磨いたりするのが難しい」ということです。とても硬いため、ちゃんと研磨しないと、かみ合う歯をすり減らしてしまうこともあります。
だから、歯医者さんや技工士さんは、ピカピカになるまでしっかり仕上げる必要があります。
このように、ジルコニアはとても安定していて強く、医療、とくに歯科の分野でとても役立っている素材です。少し難しい材料ですが、最近ではより見た目が自然で、安全性も高く、加工もしやすくなるように工夫が進んでいます。
最近ではインプラント体にも使われたりと、幅広い臨床応用が期待されています。