院内勉強会 インプラント周囲炎について
先日、9月13日の診療終了後に院内勉強会を開催しました。
今回のテーマは 「インプラント周囲炎」 についてです。
この疾患はまだ原因が完全には解明されておらず、対応方法もさまざまです。そこで私たちは、スタッフ全員で知識を共有し、対応方法についてディスカッションを行いました。
インプラント周囲炎とは?
インプラントの歯周病ともいえる病気で、インプラント周囲の歯肉に炎症が起こり、その結果、骨が吸収されてしまった状態を指します。
骨が吸収される前段階を インプラント周囲粘膜炎 と呼び、こちらは天然歯でいう「歯肉炎」にあたります。
世界的には全インプラントの約22%、日本でも約10%に発症するといわれています。
インプラントの15年間における平均残存率は90%を優に超え、非常に予後の良い治療法ですが、一度周囲炎になると治療が難しいのが現状です。
インプラント周囲炎と歯周病の違い
インプラント周囲炎は「異物であるインプラント」に対して起こる炎症であるため、治りにくいのが特徴です。
また、インプラントの構造は複雑であるため、正確な診査・診断には高度な知識と注意が求められます。
インプラント周囲炎の原因
まだ不明な点が多い疾患ですが、近年の研究から次のことが大きなリスク因子としてわかってきました。
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十分に行き届かない口腔清掃
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天然歯に残った歯周病の未治療部分
つまり、インプラント部位だけでなく お口全体の環境整備 が不可欠です。
さらに、治療後に定期的な検診を受けないことも、周囲炎の大きなリスクになります。
当院でのインプラント周囲炎への取り組み
①担当歯科衛生士による丁寧なオーラルケア
担当衛生士が、歯周ポケットのある部分が改善するまで、しっかりとした口腔衛生指導と歯周病の基本治療を行います。
②担当制による小さな変化も見逃さない体制
担当の歯科医師と衛生士による歯や歯肉のチェックを行うことで、小さな変化への対応が可能です。
③定期的なメインテナンスと周囲炎検査の実施
今回の勉強会で、インプラント部分への検査方法、検査のタイミング、治療介入のタイミングなどを院内で統一しました。
このことにより、より見逃しのない検査の体制を整えることができました。
インプラントは「メインテナンス」が大切!
今回の勉強会では、院内で行う周囲炎の検査方法や初期対応について理解を深めることができました。
インプラントは、定期的に検診を受けて正しいケアを続けることで、
「噛める喜び」を長く保ち、生活の質を高めるだけでなく、全身の健康維持にもつながる治療方法です。
15年生存率が90%を超える、非常に優れた欠損補綴法でもあります。
確かに周囲炎のリスクは存在しますが、定期的なメインテナンスを受けることで、その発症リスクを半分以下に抑えることが可能です。
さらに近年では、インプラント体(フィクスチャー)の改良により、周囲炎が起こりにくくなってきているという報告も増えています。
当院では、インプラント治療に対する理解をさらに深め、患者さまにより良い治療を提供できるよう、スタッフ一同これからも学びを重ねてまいります。
