虫歯になりにくい「甘い物」との付き合い方
[2024.05.11]
歯科医師 亀澤亜季
なぜお砂糖を食べると虫歯になるの?
虫歯菌はお砂糖を食べると、不溶性グルカンというネバネバと、酸を作 り出します。
不溶性グルカンがあると、歯の表面に虫歯菌がべたっと張り付くことができるようになり、そこで酸を出すことで歯を溶かしていきます。
不溶性グルカンさえなければ、 虫歯菌はどこかにくっつくことができないので、 うがいなどで簡単に洗い流すことができます。
虫歯になりたくなかったらお砂糖は食べちゃダメ?
虫歯にならないためには、 お砂糖の1日の摂取量を摂取エネルギーの5% 未満にすることが必要と言われています。
これは通常の摂取基準の半分の量で、 グラム換算すると成人で1日25g以下、 小児で19g以下という形になります。
スポーツドリンク一本分だけで30gくらいのショ糖が含まれるの を考えると、かなりストイックにやらないと無理です!
じつは虫歯予防には、お砂糖の量を減らすよりも、 お砂糖の摂取回数を減らす方が効果的です。
間食の回数を減らす、ダラダラ飲み食いしない、 おやつではなく食後のデザートのような形でお菓子やジュースを摂 取することが、虫歯予防にとってはとても重要なのです。
お砂糖じゃなければ、虫歯にならないの?
甘いものはお砂糖以外にもたくさんあります。
そういうものだったら虫歯にならないのでしょうか?
- はちみつ
はちみつの主成分は果糖とブドウ糖です。これらも虫歯菌の栄養となり酸を作るのですが、実は歯にくっつくために使う不溶性グルカンは作られないので、 お砂糖よりは虫歯になりにくい食品です。
- メープルシロップ
はちみつと似ているように思えますが、主成分がショ糖なので、お砂糖と同じくらい虫歯になりやすい食品です。
- パルスイート
アミノ酸から作られたアスパルテームが主な甘さの元になっている人工甘味料です。 成分的には、マルトース、エリスリトールも多く含まれていますが、 いずれも虫歯が酸を作らない甘味料なので、 虫歯にはならない食品です。 ※ ただし、パルスイート液体タイプには砂糖が含まれているので虫歯になりま す。パルスイートカロリー0液体タイプには酸味料が入っており、 これはお砂糖ではありませんが虫歯の原因になります。
- ラカントS
植物由来のラカンカ(グリコシド配糖体)と、エリスリトールを主成分とする人工甘味料です。 いずれも虫歯の原因にはなりません。※ 本来のラカンカの甘みは果糖とグリコシド配糖体からなります。ラカントSはこのうちのグリコシド配糖体のみを抽出したもののよ うですので、虫歯になりませんが、 ラカンカそのものは果糖が入っているので虫歯菌が酸を作ります。
人工甘味料って安全なの?
2023年、WHOから『 非糖質系甘味料を長期にわたり日常的に服用していると、 心血管疾患、糖尿病などに罹患する可能性があるため、 体重管理や非感染性疾患(糖尿病、心血管障害) のリスク低減を目的として摂取しないように』 という推奨勧告がありました。
そして国際がん研究機関からは『 アスパルテームには発がん性がある可能性がある』 ということが発表されました。
いずれもまだ研究中で、確実なことはわかっていません。
ただ、どちらの組織も許容一日摂取量に変更はないので、 とりすぎなければさほど問題がないというのが現在の結論のようで す。
今後の詳しい研究が待たれますね。
ちなみに、 WHOが定めるアスパルテームの安全な摂取量は体重1キロあたり 、0-40mg/day、日本での平均摂取量は0.05mg/ dayになります。
虫歯予防とキシリトール
キシリトールは古くから使われている極めて安全な甘味料の一つで す。
キシリトール以外にもたくさん虫歯にならない甘味料はあるのに、 なぜキシリトールがお勧めされるのか?
それは、古くからたくさん研究されており、 その予防効果がある程度証明されているからです。
1975年に世界で初めて、 キシリトールのむし歯予防効果を証明する研究が発表されましたが 、1980年代以降は、WHOが主宰した研究を始め、 日本を含めて多くの研究結果が報告されています。
2015年にはコクランライブラリーなどで予防効果のエビデンス がないというような意見もありましたが、 2020年にはアメリカ歯科医師会で、小児のキシリトールガムの虫 歯予防効果が支持されています。
キシリトールはどうして虫歯を予防するの?
- 虫歯菌(ミュータンス菌)が酸や不溶性グルカンを作れない
- 虫歯菌(ミュータンス菌)が増えるのを抑制する
- 歯を再石灰化させる
- 長期間摂取しても口腔細菌が順応する事はない
以上のような効果で、虫歯を予防します。
ただし、キシリトールが効果的なのは虫歯菌の一つ、 ミュータンス菌だけ。
虫歯菌は他にもいろいろな種類のものがいるので注意が必要です。
キシリトールの効果的な摂取方法キシリトールの効果的な摂取方法は以下の通りです。
- ガムが一番効果的。
- ガムを選ぶ時は50%以上キシリトールが含まれていて、
かつお砂糖入っていないものを! - 成分にクエン酸などの酸が入ってないものを選ぶ (キャンディは酸が含まれている物が多いので注意!)
- 1日5-10gを3回以上に分散させて摂取する →だらだらちびちび食べる!
- フッ素と一緒に使うと、より歯を丈夫にしてくれる。
キシリトールの効果を過信しすぎないで、 あくまで補助的なものとして使って、 効果的に虫歯予防を行いましょう!
歯科医師 亀澤亜季