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当院のレーザー治療1: ErYAGレーザーの活用法

[2024.09.22]
ErYAGレーザーの活用
歯科医師 亀澤亜季
 
当院には、炭酸ガスレーザー半導体レーザーそしてErYAGレーザーという、三種類のレーザーがあり、それぞれを使い分けながら治療に活用しています。
そのうち、主に歯周病治療、インプラントのメインテナンスで使用していたErYAGレーザーの更なる使用方法を知りたいとおもい、モリタのセミナーを受講しました。
 

 

ErYAGレーザーとは?

イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAGは頭文字)にエルビウムを添加したものを媒質に用いる赤外線レーザーで、国内では唯一歯を削ることができるレーザーとして厚生労働省の認可を得ています
口内炎や歯茎の着色の治療、様々な外科的な治療、虫歯治療、歯周病治療など色々な場面で使うことができ、また、発熱の心配が少ないことからインプラントの処置にも極めて安全に使用ができます。
 

 

ErYAGレーザーの特徴

エルビウムレーザーのいいところは、第一に高い殺菌作用を持つところです。
この殺菌効果は、レーザーが当たることで細菌が爆死するという物理的なもので、お薬などとは違い体に悪影響を与えることがありません。
第二に、接触したところの表層だけに効果があるので、骨やその周辺の組織を傷つけず、痛みが少なくとても安全に使用することができること
最後に、熱がほとんど出ないため、金属を使用しているインプラントの消毒や外科手術にも使用することができることです。
 

 

根の治療(根管治療)へのErYAGレーザーの応用

近年、この高い殺菌効果を根管治療に応用する研究がなされています。
根管治療成功させるには、根管内の菌をゼロにすることが絶対条件になります。
しかし、根っこの中をどんなに針金状のもので擦ったとしても、35%程度の汚れのとり残しがでてしまうと言われています。
そこで従来は、根の中を超音波スケーラーやシリンジを使ってあらい、残った菌を除去することに努めていました。
それに対して、ErYAGレーザーによる洗浄は、連続した小爆発により根っこの中に入れた消毒液を循環させるだけでなく、物理的に汚れをこそぎ落とすような効果もあるため、シリンジ洗浄や超音波洗浄より能力が高いと考えられます。
特に、シリンジや超音波で届きにくい複雑な形をした歯の根っこにも対応できるということが、実験の結果わかってきています。
 

 

レーザーの安全性

ErYAGレーザーは、とても安全性の高いレーザーですが、気をつけなければいけないことが何点かあります。
一つは、皮下気腫と言って皮下組織の隙間に空気が入り込むことによって起こる、歯科では比較的よく報告のある偶発症を起こすことがあることです
これに関しては、レーザー設定でエアーをオフにし、チップをあまり患部に深く入れなければ、起こる可能性はありません。
二つ目は根の治療でErYAGレーザーを使用した時起こる偶発症のヒポクロアクシデントです。
ヒポクロアクシデントとは、根の中の菌を殺すために用いられる次亜塩素酸ナトリウムという消毒液を歯の外へ押し出してしまうことで、これが起こると強い痛みや腫れが起こります。起こる確率は0.0001%と非常に稀なアクシデントですが、女性の上顎小臼歯で起こることが多いと言われています。
超音波洗浄では起こらないと言われているので、これが最大のレーザー洗浄による偶発症と言えます。
これは、レーザーのチップをあまり根管の中に突っ込まずに使用し、レーザーの出力を下げる(30mJ、10-20ppsに)こと、洗浄時に精製水を代用することなどで予防が可能です。
 
以上のように安全面に気を配れば、レーザーによる根管洗浄は手技も難しくなく、従来よりも高い殺菌作用を持つため、治療の成功率が悪いと言われている根の治療を成功に導く極めて良いツールになるのではないかと考えています。
今後は、これまでレーザーを活用していた典型的な場面にくわえ、根の治療に対してもErYAGレーザーを応用していきたいと思います。
 
 
出典
ErYAGレーザーとは
 
歯科医師 亀澤亜季

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